56弾
シリーズ生活習慣病 第56弾!2011.02月号
「永遠の誤解 Part 3」
先月、先々月に引き続き、診察で繰り広げられてきた、
『永遠の誤解』と、いう名のよくある笑い話のご紹介、Part 3です。
今回は、インスリン治療について。
”食直前に打つタイプ”のインスリンを使っている方の話です。
永遠の誤解 ⑦ 「指示通りの単位のインスリンを打つ=血糖コントロールが良くなる」
これは、一見正解にみえて、落とし穴があります。
医師から指示されるインスリンの単位は、
『食事療法がきちんと出来ている』ことを前提として、考えられたものです。
1日3食、同じような時間帯に、栄養のバランス(主食+主菜+副菜)の揃った食事をしていると想定して
「○単位」と、決めてるのです。
これならば、いつも同じように血糖値が上がるので、いつもと同じ単位量のインスリンを打つことで、
上手に血糖コントロールが出来るのです。
ですから、食事療法が乱れている場合、いつも通りに血糖値が上がるとは限りません。
指示通りの単位のインスリンを打っても、食事量が少なければ低血糖になったり、
食事量が多ければ食後の血糖値がいつもより高くなったりと、
上手に血糖コントロールが出来ないかもしれないのです。
「先生から言われた通りのインスリンを打っているのに、低血糖になったり、血糖値が300なんてあったり…、全然良くならない!!」
と、いう方の場合、まずは食生活を振り返ってみましょう。
「そういえば…。」なんて、思い当たることがあるかもしれません。
他にも血糖コントロールが乱れる原因はいくつもあります。
どうぞお気軽にご相談ください。
永遠の誤解 ⑧ 「食前の血糖値が高い=インスリン注射量を増やす」
これは危ない!!
インスリン治療をされている方は、日々御自身で血糖を測っていただき(血糖測定器)、
治療の参考にするのですが、これが返ってアダになる場合があります。
「先生、こないだね、夕食前の血糖値が200もあったのよ。」と、いうような場合。
数字を見て、ビックリする気持ちはよく分かりますが、
「だからね、血糖値を下げなくちゃ!っと思って、食事を減らして、インスリン増やしたの。」とすると、
結局、「そしたら、夜中に低血糖になっちゃって。測ったら50だって…。」なんてことも。
食事をする=血糖値が高く跳ねあがる→
それを抑えるために、その量に見合ったインスリンを打つ、のです。
つまり、目の前にある食事に対して、インスリン量を決めるのが正解です。
私はよく、『インスリンは未来に向かって打って!』と、お話しています。
例えば、食事がいつもの半分ならば、血糖値があがるのもいつもの半分、
よって打つインスリンの量もいつもの半分と、考えます。
逆に、いつもより食事量が多かった場合は、インスリンも多くする必要があるのです。
その判断の結果が良かったのかイマイチだったかを、次の食事前の血糖値を測って確認し、次回また同じような状況のときの参考にする―血糖測定ノートにメニューや反省事項のメモをする―が、基本です。
応用編として、
「今度の日曜日、ハイキングで○時間歩きます。」など、いつもより運動量が多い場合。
運動もインスリンも血糖を下げる効果があります。
いつも通りのインスリン量を注射して、たくさん運動すると、
人によっては血糖値が下がりすぎて低血糖になってしまうことも。
こういう場合は、インスリンの単位を少し減らす必要があるかもしれません。
事前に是非とも医師に相談してください。
運動は、安全に楽しく!ですね。
難しい話だけれど、
”食直前に打つタイプ”のインスリンを使っている方は、是非とも理解して欲しいなぁ…